転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


399 冒険者さんはね、役割ごとに装備が違うんだよ



「ふぅふぅ。あー、ルディーン君。できたらもう少し、ゆっくり進んでもらえるとありがたいのだが」

「え〜、でもあんまりゆっくりだと、お昼ご飯までに帰れないよ」

 もっとゆっくりって言われたもんだから、僕はそう言いながら後ろを振り向いたんだよね。

 そしたらついて来てるのがリーダーのバリアンさんとパーティーで一番若いボルティモさんって人だけだったもんだから、僕、びっくりしちゃったんだ。

「なんでみんな、ついて来てないのさ!」

「何でと言われても……」

 バリアンさんはそう言うと、後ろの方にいる他のパーティーメンバーを見たんだよね。

 だからつられて僕も見たんだけど、そしたらなんとなく解ってきたんだ。

 そっか、武器や防具が重たいんだね。

 リーダーのバリアンさんが着てる防具は革鎧に金属のわっかがいっぱいついたリングメイルってやつで、僕の横に居るボルティモさんは細かい鎖で編んだようなチェインメイルって言うやつなんだよね。

 それに対して遅れてる二人はちゃんとした金属鎧で、その上片方の人はおっきな盾を持ってて、もう片方の人は柄の長い斧みたいな武器を持ってるんだもん。

 その上二人ともバリアンさんたちよりもおっきな体をしてるもんだから、僕についてこれなかったみたいなんだよね。

「だから金属の防具だと大変だよって言ったのに」

「それはそうなんだけど、あいつらの役割を考えるとなぁ」

 バリアンさんが言うにはね、僕と一緒に森に入ってくれた深緑の風はそれぞれにちゃんとした役割があるんだって。

 でね、あの重そうな装備の二人は魔物の攻撃を受け止める盾役と、強い一撃で相手をしとめる攻撃役の人らしいんだよね。

「森の奥の魔物は体が大きくて耐久力があるものが多いからな、大きな盾で攻撃を受け止めている間にあの斧で仕留めるっていうやり方が一番安全なんだ」

「それに対してリーダーと俺は動き回って魔物を盾役の所へと誘導する役だから、少しだけ軽装ですんでるんだよ」

 そう言えばお父さんたちも、ブラウンボアをやっつける時はおっきな木にぶつかるよう誘導してたっけ。

 この人たちは狩人じゃなく冒険者だから木にぶつけて止めたりするんじゃなくって、あんな風に受け止める人がいるんだね。

「そっか。それじゃあ、あんな重そうな格好してても仕方ないね」

「ああ。だからもう少しだけ、ゆっくり進んでもらえるとありがたいんだ」

 重そうな格好をしてる理由が解ったもんだから、僕はバリアンさんにいいよって言ってちょっとだけ歩くのを遅くしたんだよ。

 でもね、

「ねぇ、ボルティモさん。あの人たち、大丈夫かなぁ?」

「あ〜、多分大丈夫だとは思うけど、ここを越えたら少しだけ休憩を入れてもらえるとありがたいかな?」

 それからもうちょっとして川沿いを通るようになると、今度はおっきな石に足を取られてふうふう言い出しちゃったんだよね。

 う〜ん、あんなのでこの先、大丈夫なのかなぁ?

 そう思ったんだけど、その後何度か休憩をする事で、僕たちは何とかベニオウの木が生えてるとこまで来ることができたんだ。


「この辺りはまだツリーホーンハインドのような強い魔物は出ないだろうが、大型の魔物が複数で現れる事はよくあるそうだ。だから常に周囲への警戒を怠らないように」

 僕が河原からフロートボードにのっけて持ってきた石を使って登り棒を作ろうとしてると、バリアンさんが深緑の風のみんなに周りに注意してねって。

 でもさ、こないだ来た時はそんなの、全然でなかったんだよね。

 だからこの近くにそんなのいるの? ってボルティモさんに聞いたんだけど、

「この森は奥の方に行くほど魔物の出現率が上がるから、この辺りだと結構な頻度で現れると思うよ」

 だって。

 そっか、じゃあこないだは運が良かったんだね。

「ねぇ、ボルティモさん。今日は僕が木に登ってベニオウの実を採ってくることになってるでしょ?」

「ああ、そうだね」

「だったら僕も木の上から、魔物が来ないかちゃんと見ててあげるね」

 そう言って僕は、クリエイト魔法を使いながらふんすと気合を入れたんだ。


「へぇ、こんな棒一本で登るんだなぁ」

 僕が作った登り棒を見上げながら、ボルティモさんは感心しながらそう言ったんだよね。

 だから僕、登るだけだったらこれでいいんだよって教えてあげたんだ。

「うん! 最初はね、おっきな階段を作ってみんなで登ったんだよ。でもお兄ちゃんが、登るだけだったらこれでいいよって教えてくれたんだ」

「なるほど。でもこの高さを登るとなると、重装備では無理そうだな」

 ボルティモさんたちはね、冒険者ギルドでベニオウの実は採取専門の人と一緒に行かないと採るのは大変なんだよって聞いてたんだって。

 でもね、自分たちも冒険者なんだから、わざわざ専門の人を連れてこなくっても大丈夫なんじゃないかなぁって思ってたらしいんだ。

 けど実際に登り棒を見てみると、確かに周りを警戒する冒険者と採取する冒険者の両方がいるねって納得したみたい。

「それに今回はルディーン君がやってくれたみたいに、石を使って棒を作り出す魔法使いもいる訳か。確かにこれは難易度が高いな」

「ルルモアさんも、森の奥まで行ってくれる魔法使いさんがいないって言ってたよ」

「そう考えると、うちらの雇い主は幸運だったわけだな。こうして登るための棒が作れて、その上木に登って実を収穫できる子と知り合いに慣れたのだから」

 ボルティモさんは僕の頭をなでながら、周りは自分たちがしっかりと見張るからベニオウの実をいっぱい採ってきてねって笑ったんだ。


 それからちょっとの間、周りの草を刈ってそれをドライを使って干し草にしたんだ。

 だってこれを敷いとかないと、せっかくとったベニオウの実がその重さで潰れちゃうかもしれないもん。

 だから上からおろした実はこの上に乗っけといてねって、僕はボルティモさんに頼んどいたんだ。

「うん! じゃあ、行ってくるね」

 僕はそう言うと、石の登り棒をするするって登ってったんだよ。

 でね、身がいっぱいなってる枝の上にのっかると、下にいるボルティモさんたちにおっきな声で着いたよって。

「じゃあ、何個か採ったら下におろすね」   

「おう! 頑張ってな」

 それからはちょっとの間、ベニオウの実を採ってはそれをひもの付いたかごにのっけて下におろすって言う作業をしてたんだよ。

 でね、いっぱい採れたから、もうこれでいいかなぁって思い始めたころ。

「あれ? なんか、こっちくるみたい」

 下からかごを持ち上げてる時に、何かおっきなのが二匹、こっちの方に向かって来てるのが見えたんだよね。

 だから僕、さっきバリアンさんが言ってたおっきな魔物かも? って思ってよく見てみたんだ。

「何だ、ジャイアントラットか」

 でもね、こっちに来てるのがジャイアントラットだったもんだから、僕は一安心。

 だってさ、あれはそんなに強い魔物じゃないもん。

 そりゃあ一角ウサギよりは強いけど、お兄ちゃんたちと狩ったジャイアントラビットより弱い魔物なんだから、大人のバリアンさんたちなら簡単にやっつけちゃうよねって思ったからね。

 でも僕、ボルティモさんに上からちゃんと見てるよって約束したでしょ?

 だから一応、教えてあげる事にしたんだ。

「おーい。ボルティモさん」

「何だい、ルディーン君」

「あのねぇ〜、あっちの方からジャイアントラットが二匹来るよぉ」

「なに!」

 でもね、それを聞いてたバリアンさんが、大慌てで周りに声を掛けだしたもんだから、僕、びっくりしちゃったんだ。

 だってジャイアントラットだよ?

 あれって僕が初めてこの森に来た時、まだ1レベルだったのにマジックミサイルが貫通しちゃうくらい弱ちい魔物なんだもん。

 それなのに、なんであんなに大騒ぎしてるのかなぁ?

 そう思って頭をこてんって倒したんだけど、

「あっ、そっか。ベニオウの実を守んなきゃいけないんだっけ」

 僕はそれに気がついて、だからかって納得したんだ。 

 だってベニオウの実は、何個か積んでるだけで潰れちゃうくらい柔らかいんだもん。

 もしジャイアントラットが来てドタバタやったら、それだけでダメになっちゃうかも?

「大変だ! こっちに来る前にやっつけないと」

 そう思った僕はすぐに体に魔力を循環させると、近い方のジャイアントラットにマジックミサイルを撃ち込んだんだ。

 だってさ、今の僕は一度に二発のマジックミサイルを撃つことができるけど、向こうはこっちに走ってきてるからもし外しちゃったらやでしょ?

 だから確実に当てられるようにそうしたんだ。

「やった。やっつけた!」

 そしたらマジックミサイルが当たったジャイアントラットは、ピギィって言ってひっくり返っちゃったんだよ。

 でね、もう一匹のジャイアントラットはって言うと……。

「あっ、逃げてっちゃった」

 前を走ってるジャイアントラットがひっくり返ったのを見てびっくりしたのか、一瞬マジックミサイルが飛んできた僕がいる方を見た後、すっごい勢いで逃げてっちゃったんだよね。

 だから僕、わざわざやっつけなくてもいいよねって見逃してあげる事にしたんだ。

 だって今日は狩りに来たんじゃなくって、ベニオウの実を採りに来たんだもんね。

「あっ、そうだ! もう大丈夫だよってみんなに教えてあげないと」

 でもね、僕は上から見てるから知ってるけど、下にいるみんなはジャイアントラットが逃げちゃったことを知らないでしょ?

 だから僕、おっきな声で教えてあげたんだよ。

 でもね、何でか知らないけどだぁてもお返事をしてくれないんだ。

「お〜い、ボルティモさん。聞こえてる?」

 だからね、ボルティモさんに向かってもっとおっきな声で聴いてみたんだよね。

 そしたらさ、ボルティモさんは一度こっちを見た後、なんにも言わずにまたジャイアントラッドがいた方を見たんだもん。

 もう! 聞こえてるんだったら、なんか言ってよ!


 ルディーン君いわく、ジャイアントラッドは弱い魔物です。

 ただですね、1レベルとは言え小さなころから勉強などをして知力の数値を上げ、そして魔法使いよりも高い攻撃魔力を持つ賢者のルディーン君が放ったマジックミサイルをくらっても死なない程度には強い魔物なんですよね。

 そんなのを小さな子供が木の上から放った魔法一発で倒したら、そりゃあみんな驚いて固まってしまいますよねw 


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